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統括理事長式辞

統括理事長長谷川 亘

京都コンピュータ学院創立55周年・京都情報大学院大学創立15周年記念式典にあたり,本日ここに,関係各国の大使閣下はじめご来賓の皆々様,そして各界の多くの皆々様にご臨席賜りましたことを,心より厚く御礼申しあげます。
京都コンピュータ学院は本年,創立55周年の佳節を迎えました。また,京都情報大学院大学は,2003年の開学宣言と認可決定以来,ちょうど15年となります。
本日のこの佳き日を,卒業生・校友の皆様,在学生の皆様,ならびにライブ映像のストリーミング配信をご覧になっている校友や在学生の皆様とご一緒に迎えられましたことは,教職員一同の大きな喜びでございます。
本学は現在,京都コンピュータ学院洛北校,鴨川校,京都駅前校,京都日本語研修センター,京都自動車専門学校,京都情報大学院大学の京都本校,札幌サテライト,東京サテライト,そして教育事業をサポートするKCGキャリアなどの株式会社により,KCGグループを構成しております。本日は,歴史を振り返りながら,未来への展望についてお話しさせていただきます。
京都コンピュータ学院の原点は,京都大学の卒業生であり,大学院生であった初代学院長・長谷川繁雄と現学院長・長谷川靖子が始めた私塾にあります。これは,若者が自宅で始めた中学生・高校生対象の小さな私塾でしたが,1963年(昭和38年)に,その教室で,京都大学の若手研究者を中心とした「FORTRAN研究会」が始まりました。コンピュータがごく一部の研究者だけのものだった時代にあって,その研究会は日を重ねるにつれ,近畿圏の他大学の研究者や企業関係者にも知られるところとなります。
その後,1969年(昭和44年)に「京都コンピュータ学院」という校名を掲げて,高等学校卒業者を対象とする全日制課程が開設されました。その当時,学院創立者 初代学院長・長谷川繁雄は,「ソフトウェアとは,ものの考え方のことであって,哲学の一種であり,これは人類史を変革する」という言葉を残しております。創立以来,本学は「時代を担う創造性豊かな情報処理技術者の育成」という教育理念を掲げ,常にソフトウェア技術の学問的性格を重視し,単なる知識・技術の伝授に終始することなく,理論を重視した本格的なコンピュータの教育を実践してまいりました。こうした教育理念は,時を経ても変わることなく受け継がれており,本学の教育哲学の根幹をなしております。

時代は進み,科学の進展や目覚ましい技術革新や,また社会経済の急激な変化を受け,日本の産業界では,国際的に通用するIT分野の高度専門職業人の育成が急務とされるようになりました。京都情報大学院大学は,日本最初のIT専門職分野における国内での最高学位(ターミナルディグリー)を授与する大学として,15年前に開学いたしました。開学当初からアジア全域を対象とするITプロフェッショナルスクールを目指し,海外他国との連携も進めてまいりました。現在では,海外の提携大学は90校以上にのぼります。また,近年は,これまで本学と特段の繋がりのなかった国や地域からの留学生が増加し続けております。彼らは,インターネット検索を通じて本学の存在を知り,カリキュラム等について調べたうえで本学への進学を決定します。これはインターネット上での情報収集のみで自らの進学先を選ぶ時代が到来し,本学の学生募集がグローバルに展開し始めていることを意味しております。

2013年には,自動車整備士養成の伝統校である京都自動車専門学校がグループ校に加わりました。自動車とITの結びつきがさらに強まり,ITの知識を持つ整備士の重要性が高まることを予見してのことであります。2020年に向けて自動車の自動運転実用化が進む中,私どもは自動車産業のさらなる発展への貢献という責務を果たすべく,努力を重ねているところでございます。
本学KCGグループは,古くから関係のある京都大学をはじめとして,アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学,ロチェスター工科大学(RIT)やコロンビア大学,中国においては大連外国語大学,上海建橋学院をはじめ130以上の大学等,海外の教育機関とも密接な関係を持ちながら,コンピュータ関係のみならず,各分野で先達に学びつつ,常に情報教育,技術教育の本質を追求してまいりました。カリキュラム改革にも積極的に取り組み,学ぶ側中心の教育の実現を目指しております。
さらに,海外の教育機関との交流のみならず,海外コンピュータ教育支援活動IDCE(International Development of Computer Education)にも力を入れております。この活動は,今から約30年前,1989年のタイ王国へのパソコン寄贈とコンピュータ教育の技術指導から始まっております。2007年には,エリトリア国との間でコンピュータ教育支援に関する調印式を執り行い,同国の教育省・成人教育局にコンピュータ寄贈をいたしました。また本年は,ガボン共和国に144台のコンピュータを寄贈いたしました。本学がコンピュータの寄贈や技術支援を行った対象国は25ヵ国にのぼります。このような海外コンピュータ教育支援活動のご縁により,本日ここにエリトリア国,そしてガボン共和国の大使閣下にご臨席賜っております。その他,本学ではこの30年の間に,独立行政法人国際協力機構(JICA)様からの要請による研修生の受け入れや,JICA専門家としての教員の海外派遣も行ってまいりました。モザンビーク共和国においては,情報教育の高等教育機関の開学にも携わりました。
本学は,諸外国の皆様と手を取り合いながら,世界規模でのIT教育の発展に寄与することを,使命の一つと心得ております。今後も,真にグローバルな教育機関として在り続けるために,世界中の皆様と共に歩み続けたいと願っております。

現在,社会の生活全般において,ICTは大きな影響力を有しております。日本政府は第5期科学技術基本計画において,目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0」を提唱しております。「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経済発展と社会的課題の解決を両立する」というこの未来社会は,IoT(Internet of Things)で全ての人とモノを繋ぎ,様々な知識や情報を共有することによって今までにない新たな価値を生み出し,課題や困難を克服していくことを目指しています。本学が管理事業主体を務めている地理的トップレベルドメイン「.kyoto」は,無限の魅力を持つ京都という街をサイバー空間に拡張する試みであり,「Society 5.0」の実現に向けた実践であると言えます。
今日までの55年という歴史の中で,多くの方々から温かいご支援をいただきましたことを,私ども一同深く感謝いたしております。日本最初のコンピュータ教育機関,日本最初のIT専門職大学院を生み出した本学のDNAとも言うべきパイオニアスピリットを,在学生,卒業生,教職員が継承し,4万人を超えるKCGファミリーに息づく先見性とチャレンジ精神を各々の分野で輝かせることが,次の時代の礎になると確信しております。本学は,これまでの実績を活かしながら,ご支援に応えるべく今後も新たな挑戦に邁進してまいる所存でございます。
最後になりましたが,本日ご臨席の皆々様,ご関係の皆々様に,心から御礼申しあげますとともに,今後とも変わらぬご支援ご協力と,ご指導ご鞭撻を賜りますよう,教職員一同,心よりお願い申しあげます。
本日は,ご多用のところご来臨賜り,誠にありがとうございました。