京都コンピュータ学院が創立55周年,京都情報大学院大学が創立15周年を,ここにめでたく迎えられましたことに,長谷川 亘 統括理事長をはじめとします関係者の皆様に,衷心よりお慶び申し上げます。
また,本日は,このように祝辞を述べる機会を頂戴しましたことに,深く感謝申し上げます。
実は,私が大学生のときに所属した研究室は,長谷川利治先生の研究室であり,長谷川先生は,京都情報大学院大学の第2代学長を務められました。
そして,その長谷川研究室で私に直接の研究指導をしてくださったのが,京都情報大学院大学の現学長の茨木俊秀先生です。そのようなこともあり,御校にはとても深い縁を感じており,本日も我が事のように感慨も一入です。
京都コンピュータ学院が創設された1963年,私は小学校高学年でしたが,当時,コンピュータは市民の暮らしからは程遠いものでした。
私は,当時,そろばん塾に通っていたことを覚えています。
日本に初めて「情報工学科」が京都大学および大阪大学に設置されたのは1970年でした。
それよりも7年も前に情報化社会の到来を見据え,我が国の情報処理技術の向上と関係分野の発展の基礎固めに貢献するため,日本初のコンピュータ教育機関を創設された長谷川繁雄先生,長谷川靖子先生の先見性には,敬服の念を抱かずにはいられません。
その理念は,日本初のIT専門職大学院として2004年に開学された京都情報大学院大学にも受け継がれております。
このような素晴らしい歴史的事実を,両校で学ばれる在校生をはじめ,卒業生,関係者の皆さまには,ことさら大きな誇りにしていただきたく思います。
現在,京都コンピュータ学院,京都情報大学院大学のカリキュラムにおいては,情報分野の「技術(テクノロジー)」に関する科目と同時に「芸術(アート)」に関する科目にも力を入れておられます。
私は,そのことに両校の今後の大いなる発展の鍵があると考えております。
そもそも「テクノロジー」も「アート」も,ラテン語ではars(アルス),古代ギリシャの思想ではpoiesis(ポイエーシス:ものの製作,弁論,試作)という一つのカテゴリーに属するものです。
そのポイエーシスにおいて共通して働く「知」こそが「テクネー」と呼ばれ,それが今日のテクニックやテクノロジーの語源となっています。
日本は古くから,職人(匠)の技術が極めて秀でた国であり,その特性を,例えばデザインやアニメといった芸術創造にも発揮したことにより,極めて高度な達成をみた国として,世界から高い尊敬を得てきました。
言い換えますと,日本は「技術」と「芸術」の類まれな結合を実践している国として,世界を先導しうる立場にあると言えます。
激しい国際競争の中で,この歴史的な特性を日本から生まれるイノベーションに十分に活かしていくことが求められています。
このように本来は同じカテゴリーにあった二つの「術」を再結合し,新たなパラダイムを構築する土俵を備えておられる両校が実践する専門人材の養成の重要性は,これからますます高まっていくことでしょう。
そして,その専門性をさまざまな産業や社会生活に取り入れることで,少子高齢化,地方の過疎化,貧富の格差など,多くの社会課題を克服する可能性を存分に秘めております。
両校で学ばれた方々が,情報関連の「技術力」,あるいは「芸術性」を備えた「匠」として,新たなイノベーション創出に関わり,情報技術による輝かしい未来社会の構築に一層貢献されますことを願っております。
改めて,京都コンピュータ学院,京都情報大学院大学のこれまでのご功績に敬意を表するとともに,今後ますますのご発展を心よりお祈り申し上げ,私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
本日は誠におめでとうございました。