本日ここに,京都コンピュータ学院創立45周年・京都情報大学院大学創立5周年記念式典が挙行されるにあたり,京都の地で高度技術者育成という同じ使命を持っている京都工芸繊維大学を代表してお祝いの言葉を述べさせていただく機会を得ましたことは,私の大きな喜びとするところであります。
20世紀における科学技術は驚異的な発展を見るとともに人間の可能性を限りなく広げましたが,その半面で地球環境問題,エネルギー問題,民族問題,都市問題,冨の南北間格差問題,宗教の対立といった地球を存亡の危機に陥れるような問題を引き起こしました。また,怒濤のように押し寄せたグローバル化と情報化の波は,従来の考え方では対処できない問題をわれわれに突きつけました。
高等教育に携わる者は,このような現代社会が抱える喫緊の困難な課題に対して真剣に立ち向かってゆかなければなりませんが,貴学院は,このような状況を深く認識し,社会の潮流,学問への新たな要請とその根底にある本質的課題を洞察し,新しいパラダイムに基づく社会ニーズにマッチした実践的情報教育を果敢に導入されました。
1963年には,新しい考えに基づいて情報技術者を育成するため,京都コンピュータ学院を設置されました。また,2004年には,来るべきユビキタス時代の社会ニーズに応え,時代を担い,次代をリードする高度な実践的能力と創造性を持った応用情報技術専門家を育成するため,我が国で最初の専門職情報大学院を設置されました。
貴学院は,新しい教学理念の基に,「文系,理系の障壁を取り除いた教育」,「理論を重視しながらの実践的教育」,「創造性育成をモットーとした教育」,「技術の進展に即応した教育」,「複眼視的思考能力の養成のための教育」,「感性知性の涵養のための教育」,「世界最新のIT教育カリキュラムを導入した国際的通用性の高い教育」など,社会変化を正面に見据えた教育を実践してこられました。
貴学院は,パイオニアとしてまたトップランナーとして国内外の実践的情報教育をリードし,多数の高度な技術,幅広い知識及び国際性を有した高度なITプロフェッショナルズを産業界をはじめ各界に輩出してこられました。
貴学院が,創立45周年を迎えられ,今日の隆盛を見るに至りましたことは,誠に喜ばしく,これはひとえに,歴代の理事長,学長をはじめ,教職員の皆様のたゆみない努力と地元関係者のご協力の賜であり,心から敬意を表する次第です。
今日,我が国の社会は,国際化,情報化や高齢化をはじめ,地球環境への対応など,多くの困難な課題に直面しています。また,我が国の産業を支える基盤技術に対する信頼性の回復や安全性の確保,理科離れなど技術者教育をめぐる課題も山積しています。
貴学院が,パイオニア・スピリッツという崇高な精神の基に,これまでの実績と伝統を踏まえ,様々の困難な社会的課題を克服し,時代の要請に応える教育研究の実践を通じて一層飛躍発展され,我が国の社会,経済,文化及び国際社会にますます貢献されることを期待して私の祝辞といたします。